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| 主催者 | 日本チョークアート協会 | |
| 参加者 | 日本チョークアート協会 会員 および チョークトーク生徒 | |
| 日程 | 2005年9月18日(日)~25日(日) | |
| 会場 | カフェ・ラ・プティフルール(東急東横線 大倉山駅 徒歩3分) | |
| 会場の様子 | 8日間合計 約 300人 ◇ 作品テーマ : 特になし、個人の作品展示 今回の個展では、ライターの方が「ちいさなチョークアート展」の様子、協会代表栗田貴子の、チョークアートにかける想いを文章に残してくださいました。個展の雰囲気がよく伝わる、素敵な文章でしたので、こちらに掲載をさせていただきました。写真とあわせてお楽しみください。 夏の余韻を、まだどこかに残しながらも、着実に秋の足音が聞こえてきた季節。昼の熱気も幾分やわらいだ、爽やかな午後のひととき。とあるカフェで、常連らしい客が、コーヒーを囲んで世間話に花を咲かせる。 そんなゆるやかな時の流れと同じフロアの反対側で、慌ただしく来訪者の質問に答えている女性の姿があった。 「始められたきっかけは何ですか」 「習いたいけど、どうすれば」 対応しているのは、栗田貴子さん。展示されているのは、黒板にパステルで鮮やかな絵を描いた、チョークアートと呼ばれる作品たち。そう、ここは、彼女が代表を務める、日本チョークアート協会の会員が描いた作品の展覧会場。
カフェや飲食店の看板に用いられ、料理の絵や文字をカラフルに描き、視覚に訴えてお店に誘う、存在感のある看板。チョーク、とあるが、学校の授業で使用する、いわゆるスクールチョークは用いずに、オイルパステルを使うことが多い。 「絵画に関心のある方が、趣味の幅を広げるために参加されるケースが多いですね。当社のコースは、海外の第一人者の方に教わることができるのが一番の魅力。朝から工房が使える環境のもと、一週間に三作品のペースで制作に取り組んでもらいます。期間と値段は、九日間のコースが三十万円台、二十三日間のコースが五十万円台。卒業日には、生徒さんの制作作品をエプロンにして、記念に進呈しています」 運命に出会えたのは、好奇心と、あきらめない気持ち 「最初、本で調べればすぐ分かるものと思っていましたが、手がかりはなかなか掴めませんでした」 やがて、現地のスクールで講座を見つけ、自分で描けるものと知り、いったんは帰国。日本でチョークアートの技法を模索する道を選ぶ。しかし、当時は十分な情報が得られる環境ではなかった。 それでも、オーストラリアで出会った個性的な絵たちを忘れることができない、そんな自分に気づき始めていた。再渡豪を決意したのも、そんな心の声に、素直に従ったからだ。二〇〇一年に出発。しかしその前に、いったんは技術翻訳業の仕事に就いている。辞めることに、不安はなかったのだろうか。 「確かに、当初の留学の目的は、英語の習得。でも、英語はあくまでツールであって、技術ではないな、という思いがあって。自分の目指すべき『何か』。 その答えをずっと探していました。また、親が自営業ということもあり、会社を辞めることに対して特に抵抗はありませんでした。このままOLを続けるよりも、専門的な技術を身に付けられたら、と思って」 チョークアートが看板屋の技術であることを知り、教えてくれる先を探し始めるが、なかなか了解してくれる看板屋が見つからない。またもや壁につきあたる。 「当時は知らなかったのですが、チョークアートはオーストラリアの伝統的な職業技術。日本で言えば、植木のようなもの。女性で、しかも外国の人が、植木の技術を教えてください、と言いに来ても、簡単には受け入れられないですよね。また、日本でも、植木技術の本はあまりないですよね。以前、留学生として来たときに、チョークアートについて書かれた本が見つからなかったのも、無理はありません」 しかし、神様は時として、人の一途なところに惚れ込み、手助けをしたくなるものらしい。三ヶ月後、偶然にも、教えてくれる人が見つかったのだ。 「フランシス・ヒルという女性。彼女に出会えなかったら、間違いなく今の自分はないでしょうね」 どうして、チョークアートにこれほどのめり混んだのだろう。 「面白くて楽しくて自由で… チョークアートの魅力はたくさんあるのですが、一番大きいのは、『完璧じゃなくていい』ところ。絵画を描く、となると、学校に通って、描き方を勉強して… とやる前に難しく考えてしまう。チョークアートにも基本的な技術はありますが、それを身に付けた後は、個性を生かして好きなものを伸び伸び描けるのが魅力です」 展覧会の作品を見本にして、分かりやすく説明してくれた。 栗田さん自身が描いた、大好きなパンを題材にした作品。飲食店に勤めている方が、アイスクリームを描いた作品。二つの作品は、色のトーンも季節感もまったく異なる。しかし、どちらも自分の好きなものに対する想いがよく表れ、そこに作者の個性が見て取れる。描きたいものを純粋に表現する喜びが、ひしひしと伝わってくる。 ところで、実物のように、立体的に見えるのは、なぜ。 「グラデーション、つまり、明暗の連続的な変化を色の濃淡を使って表現するという、チョークアートの代表的な手法を使っています。光の当たっている面は明るい色、反対側は暗い色をぬり、指で混ぜ合わせることで、立体感が出せます」 なるほど、立体感という魔法の正体は指か。この技術へのこだわりは、栗田さんの指導法にも表れている。 「日頃から、スーパーのチラシなど、食べ物の写真を見て、光がどこから当たっていておいしそうに見えるのかをチェックすることと、それをスケッチブックに描くことの二つに取り組んでもらっています。これを継続的に続けていけば、立体感を表現するコツがつかめます」 また、当教室では、生徒自身が感覚的に納得して学んでもらえることを大切にしているという。 「例えば、生徒さんがある色を表現したいときに、私が〇番と×番の色を混ぜ合わせればよい、とアドバイスする。すると、中には、そのメモを一生懸命とるだけの方がいる。でも、実際に求めている色かどうかは、その生徒さん本人にしか分かりませんし、私の答えを覚えるだけでは、応用が効かないですからね。自分で試行錯誤しながら、答えを見つけていってほしい。ただし、『教える』ことに妥協はしません。十分に目の行き届く指導をしたいので、一つの教室は最大五人まで。それ以上は生徒をとりません」 栗田さんと話をしていると、色に対する想いの強さに気づく。 「日本のお店に合った看板を用意するためには、日本独自の繊細な色使いを意識する必要があります。チョークアートの本場である、オーストラリアテイストの明るさを前面に出すと、浮いてしまう可能性がありますから。飾られる場所の雰囲気に合わせ、落ち着いた、しっくりくる色合いを考えなければ。ちなみに、今回の展覧会は、紫をテーマ色にしています。葡萄をはじめ、秋のイメージがありますから。実際、何にでも良く合う色で、使いやすいんですよ」 なるほど、よく観察してみると、作品の下に敷いてあるシートは、すべて紫色。展覧会場全体に統一感があるのはこのためか。 「私は、チョークアートは看板だと考えています。日本の看板は、文字主体で目立てば良い、という印象があります。チョークアートは一枚一枚に描いた人の個性が表れるので、違ったぬくもりがありますね」 個性、と聞いて、ふと思い出したことがある。宮大工の育成に携わっている棟梁の話。 「一心にやれば仕事に心が入ります。心なんてと思うでしょうが、人がやるからには結果に人が出るんです」 どこか、チョークアートに通ずるところがある。これを踏まえて、栗田さんの仕事を一言で表現すると、現代に生きるアート職人、といったところか。 お客さんは、主に、カフェをはじめとする飲食店が中心だが、リフォーム会社の看板を手懸けたこともあるそう。 「チョークアートの看板を出す前は、そこにリフォーム会社の店舗がある、ということが分からなかったみたいです。看板を飾ったら、暖かい雰囲気が出せて、お客様がお店に入りやすくなった、と聞いています」 二年前に協会を立ち上げ、意欲的に活動されていますね。 「継続的な活動ができるのが協会の利点。以前は、展覧会を開いてせっかく人脈を築いても、その場限りで終わってしまうことが多かったです。協会というネットワークができたことで、例えば、作品をホームページ上に公開して会員同士が批評できる場をもつことができました。このように、仲間同士の連携が生まれたのが大きいですね。また、チョークアートの知名度が上がったことで、今回の展覧会の会場である横浜に、沖縄から習いたいと訪ねてくださる方もいらっしゃいました」 今年は、念願の解説本も出版されましたね。 「自分の理想とするものを本にしたい、という希望は、ずっと持ち続けていました。電話での説明だけでチョークアートを理解してもらうのは難しいですから、実際に実物を見てもらうために、出版社に直接行って営業しました。真新しさから、興味をもっていただけるところは多かったです。でも、逆に言えば、出版社にとって未知の分野。売れるかどうかは、まったく判断がつかなかったそうです。幸いにも、売れ行きは予想以上に順調でした」 夢を、教えてください。 「看板屋を極めることが第一目標。提案型の仕事なので、依頼のあったお店に合う看板をどんどん作っていきたい。また、これからも、毎年一回は展覧会を開いていきたいです。チョークアートに対する関心が高まってきているので、次の展覧会では、私が実際に描く姿をお見せする、パフォーマンス的な試みも考えています」 そんな栗田さんのお気に入りの音楽は、エミネムをはじめとするラップやロック。テンポの良い曲を聴きながら、気分の乗った日に、一気に作品を仕上げるそう。 協会の代表、教室の講師、そして本業の制作と、幾つものわらじ草鞋を履きながらも、地に足のついた安定感で、見事にこなす。その秘訣は、周りのエネルギーを取り込める奔放なハートと、依頼主の要望に応えるために、数々の作品を繊細かつ力強く仕上げてきた、その指にあるのかもしれない。 ■文章 大戸清康
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